ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】
もがく私を、逃がすまいとさらに深く抱き込んで。
「昔からそうだよな、お前って」
低い、男の声が言う。
「……え?」
「見てるこっちがつらくなるくらい、一人で背負い込んで」
「だ、大丈夫だってば。あの、私、平気だから……っ」
「ずっと、言いたかった。お前はもっとズルくなっていい。利用しろ、俺を」
ぽんぽんと、あやすように背中を、頭を撫でてくれる優しい手。
「やだ、ズルく、なんて……」
笑おうとするんだけど。
乾ききった唇は、うまく動いてくれない。
かわりにゆるゆると、視界に映る景色が滲んでいく。
「まさき……」
「ん」
その背にしがみつくように手を回すと、応えるように、彼の腕にぎゅっと力がこもった。
「今だけ……だから。ごめ、なさ……っ……」
言うそばから、涙があふれて止まらなくなる。
ごめんね、ミユキちゃん。
今だけ、雅樹を貸して。
ほんの、少しだけ。
このぬくもりに、甘えさせて――