ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】
11. in the dark~ライアンside
グラスの残りを一気に喉へと流し込み、そのままカウンターへガツンっと置いた。
「もう1杯、同じもの」
一瞬顔をしかめた若いバーテンは、けれど何も言うことなくグラスを取った。
飲んでも飲んでも。
気分は一向に浮き上がることなく、ひたすら胃の奥が鉛を飲んだように重くなっていくだけ。
酔えるわけない、こんな夜は。
浅く嗤って、無言で差し出された新しいグラスを口へ運ぶ。
脳裏には、さっき表通りで見た光景が悪夢のようにリプレイされていた。
追いかけなければよかった。
飲み干したアルコールが、苦い思いとともに喉を焼いた。