ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】
心配して来てくれたのに、あんなことをして泣かせて、あげく怒鳴り散らして……。
猛烈な勢いでこみあげてきた後悔に追い立てられるように、会社を飛び出した。
一言でいいから謝りたくて。
探して探して――見つけた。
矢倉の腕の中で泣く飛鳥を。
肩を細かく震わせて泣く飛鳥の耳元で矢倉が何かささやくと、彼女は頷いて、しがみつくように体を寄せた。
だらりと下ろしたこぶしを、握り締める。
きつく、皮膚から血が噴き出すんじゃないかと思うほど。
わかっていたはずじゃないか。
もう彼女は、僕のものじゃない。
今飛鳥が愛しているのは、あの男で。
僕じゃ、ない――
ドロリと体内をうねる強烈な嫉妬を持て余しながら。
滑稽なピエロのように。
僕はただ立ち尽くし、抱き合う恋人たちを遠目に見つめるしかなかった。