ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】
生々しく蘇るのは……誘うように開いた、震える唇。
縋るような瞳。
乱れる吐息。
爪を立てる細い指。
しっとり上気した、なめらかな肌……
手が、唇が、全部覚えてる。
彼女の感じる場所。
彼女が悦ぶ、……
まるで、砂漠で飲んだ1杯の水のようだった。
わずかに与えられたそれが、強烈な飢えと渇きをもたらすように。
久しぶりに触れた体は、必死に忘れようとしていた欲望を暴き立て。
疼く身体は、僕自身にも、もうどうしようもなくて――
情けないな。
たった一人の女性のために、こんなに心乱されて。
コントロールできなくなるなんて。
いつの間に、僕はこんなに弱くなったんだ……
今日はこのまま、酔いつぶれてしまおう。
覚悟を決めて、新しいグラスに手を伸ばした時だった。
<やっぱりここだったわ>
華やかな香りが、僕を包んだ。