ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】

床に亀裂が入って、今にも揺れだすような心地がして。
両足にぐっと、力を込めた。


「僕がそれを、承知すると思ってる?」


「思ってる。だってあなたは……優しいから。私の幸せを、望んでくれるでしょ?」

びくつきながら上げた視界に映ったのは、傷つき、褪せていく翡翠の色。
大好きな、大好きな……愛おしい瞳が、輝きを失っていくのを、
私はなすすべもなく見守った。


「君は今、自分がどれだけ残酷なことを言ってるか、わかってる?」


喘ぐように、彼の唇が空気を求めて動き。
苦し気なうめき声が聞こえた。


「ごめんなさい、ほんとに……」

私はただ、謝り続ける。
彼が、この嘘を信じるまで。
私を、嫌ってくれるまで。


だって私は、あなたの鉛の翼になりたくないから。


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