ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】

飛鳥とは違う、その感触。
構わず舌を、無理やりこすりつけた。

シンシアは上手かった。
キスだけで巧みに僕の中の熱を暴き、煽り立てていく。


アルコールがようやく回ってきたのか。
皮膚に貼り付くような人工的な香りのせいか。
思考は、スモッグがかかったようにぼんやりとして。


飛鳥の笑顔、
僕を呼ぶ声、
繋いだ手、
抱きしめた、身体

必死で記憶の中から引っ張り出そうとしても。
どんどん、どんどん、それは遠のいていく。

手を伸ばしても、もう――届かないほど。



どうだってよかった。

飛鳥はもう、この部屋には戻ってこない。
だったら、相手が誰でも同じじゃないか。




たぶん今夜は、一人じゃ耐えられそうにない。




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