ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】
「思い出したよ。君が変な事言うから、僕たちがゲイカップルだって勘違いしちゃった女の子だね?」
「そう。きっとそのせいだな」
「へ?」
「今朝前を通りかかったオレを見つけて、わざわざ店から出てきて、教えてくれたよ」
「何を?」
「お前の浮気」
「……は!?」
な、なんだよそれは!?
「テンション高く言われたんだよ。『あなたのカンは当たりです。ガチで浮気してますよ彼氏』ってな」
「なんのことかわから――」
「お前昨夜、モンスーンの三軒隣のバーで飲んでただろう。看板をしまうために外にいた宮本さんは、店から出てくるお前を見たそうだ。女と一緒だったらしいな」
ギクリと、身体が強張った。
見なくてもわかった。
拓巳の視線は今、ジャックナイフ並みに尖ってる。
「彼女は勇ましくもお前たちの後をつけて、タクシーに仲良く乗り込むところまで確かめた。女はロングの黒髪、アジア系の美人。使ってた言葉は、上海語」
「へぇ、あれが上海語だってわかるなんて、彼女すご――」
「抱いたのか」
地を這うような低い声。
怒り狂っているらしい。
「……君には関係な――」
「抱いたのかって聞いてるんだ! 答えろっ!!」