ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】

本気だった。
本気で、抱くつもりだった。

だからこの部屋にシンシアを連れ込んだし、ベッドへ運んだ。

キスもした。



でも……


「……吐いた」


「は、いた?」


昨夜の失態を思い浮かべて、自嘲気味に笑いながら。
よろめく重たい上体を、なんとか起こした。


「彼女の香水のせいか、アルコールのせいか、たぶん両方かな。ベッドに行った途端ものすごく気分が悪くなって……トイレに駆け込んで」

間一髪、間に合ったけど。
それから後が、大変だった。

吐き気は一向に収まらず、トイレから出られないし、
「サイテー」と言い捨てて、シンシアは出ていくし。

何か変な病気じゃないかと不安になりかけた明け方近く、ようやく落ち着いてきて……
そのままベッドに戻り、死んだように眠ってしまった。

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