ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】
「っちょ、飛鳥……何それ」
さすがに僕も、詰るように言って半身を起こした。
確かに、飛鳥と出会う前の僕は、ちょっと口にできないほど乱れた生活をしていた。
いろんな女性とつきあってきたし……彼女たちを口説く時、浮気がバレた時……散々金を使ってきた。
あの女は誰だとヒステリックに喚かれて、ほとんど店ごと服を買わされた時もあったっけ。
それで事態が解決するなら安いものだと思っていた時期があったことも確かだ。
もしかして、彼女は疑ってるんだろうか。
自分へのプレゼントも、それと同列――ご機嫌取りだと。
「飛鳥、君へのプレゼントは特別だ。言っただろ、それは全部僕の君への愛で、だからっ……」
でも飛鳥は、狼狽える僕を見て、穏やかに頷いた。
「うん、わかってる。ライアンが私を本気で愛してくれてることは、すごく感じる。疑ったことなんてない。だからね……」
言葉を切った彼女の唇が、次の瞬間ふわりと綻ぶ。
「わざわざそれを、お金で証明しようとなんて、しなくていい」
どく――っん
心臓が、滑稽なほど程不格好な音を立てた。