ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】
「あぁ!」
一気に霧が晴れたような思いで頷いた。
「言った、確かに言った。そうしたら、カウンターの端に座ってた男がいきなり吹き出して。そして、言ったんだ――」
「「ジャイアンかよ」」
顔を見合わせて、2人してぶっと笑ってしまった。
その一言で相手が日本人だとわかった僕は、「君、日本人なの?」って声をかけたんだ。それが、拓巳だった。
「お前が日本語で話しかけたせいで、相手の男はオレたちが“お友達”だと勘違いして」
「そうそう。『2人とも表に出ろ』、とか結構危ない展開になったんだっけ」
そいつは仲間を呼んでいたらしく、外の駐車場には50人近い野郎どもが物騒な雰囲気を漂わせて集まっていて。
これはちょっとまずいかも、と思ったんだ。
僕一人なら問題ないが、この日本人を無事に帰してやらなくてはならない。
さて、どうするか――……
迷いは、一瞬のうちに消えた。
拓巳の隙のない構えを見た途端、彼が何か、格闘技のエキスパートだとわかったから。
そしてまぁ、結論から言うと、2人で返り討ちにしてやったんだ。
その後、巻き込んでしまったお詫びに奢る、と別の店へ移動して。
(彼女はとっくに、僕らを置いて逃げてしまっていた)
シェアハウスを探しているという彼の話を聞いた僕は、うちに空きがあると誘った。
それからずっと今まで、付き合いが続いている、というわけだ。