ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】
両手に膨らんだビニール袋を下げて入ってきたのは、ナディアだった。
ぎゃあぎゃあ文句を垂れ流しながらやってきて。
途端。
「ちょっと、やだっ!!」
その袋をバサバサぁっと取り落とした。
そして、座り込んだままの僕へぶつかる勢いで突進。
裸の肩へ爪を立て、ガッと掴んできた。い、痛い……
「拓巳っあれほど落ち着いて話せって言ったのに、殴ったでしょ、グーでっ!」
「お前だって昔、オレのこと殴ったじゃないか。それに倣っただけだ。何が悪い」
「あたしはパーだったわよっ! グーじゃないのっ!」
「パーでもグーでも同じだろ」
「同じなわけないでしょっ! パーはグーよりグレイトなのよ、世界の常識じゃないの!」
「はぁ? なんだそれ、ジャンケンかよ」
「あ、バレた?」
「おまっ……バカにしてんのかっ!?」
くくっ……
「ふ、ふふっ……」
相変わらずな2人のやり取りが、なんだかとてつもなく可笑しくて。
笑いが止まらなくなる。