ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】

両手に膨らんだビニール袋を下げて入ってきたのは、ナディアだった。
ぎゃあぎゃあ文句を垂れ流しながらやってきて。

途端。

「ちょっと、やだっ!!」
その袋をバサバサぁっと取り落とした。

そして、座り込んだままの僕へぶつかる勢いで突進。
裸の肩へ爪を立て、ガッと掴んできた。い、痛い……

「拓巳っあれほど落ち着いて話せって言ったのに、殴ったでしょ、グーでっ!」

「お前だって昔、オレのこと殴ったじゃないか。それに倣っただけだ。何が悪い」

「あたしはパーだったわよっ! グーじゃないのっ!」

「パーでもグーでも同じだろ」

「同じなわけないでしょっ! パーはグーよりグレイトなのよ、世界の常識じゃないの!」

「はぁ? なんだそれ、ジャンケンかよ」

「あ、バレた?」

「おまっ……バカにしてんのかっ!?」

くくっ……

「ふ、ふふっ……」

相変わらずな2人のやり取りが、なんだかとてつもなく可笑しくて。
笑いが止まらなくなる。

< 216 / 343 >

この作品をシェア

pagetop