ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】
お腹を抱えて笑い出した僕を、ギョッとしたように2人が振り返った。
「ほら見ろ、お前が変な事いうから、ついにこいつ、ぶっ壊れたんじゃないか?」
「何言ってんのっ! 拓巳がグーで殴ったからでしょ? 医者に見せた方がいいんじゃない? ほら、救急車呼んでっ!」
「ふふっ……ありがとう。2人がいてくれて……よかった」
口を開いたら、言葉が零れ落ちてきた。
そんな、肩の力が抜けたような、自然な台詞だった。
「どうしよう。ライアンが『ありがとう』って言ったわよ拓巳」
「あぁ、聞き違いかと思ったけど、お前も聞こえたか?」
「聞こえたわよ。明日、世界が終わったらどうする? あたしまだ死にたくないのに」
「オレだって嫌だよ」
ダメだ、また笑いそうになってしまう。
そして僕は、自分の身体がずいぶん軽く感じることに気づいた。
頭はまだ痛いけど、これは単なる二日酔いだから……大丈夫。
きっともう、大丈夫だ。
「お腹すいたな、ナディア、何を作ってくれるの?」
玉ねぎやらニンジンやらがはみ出した袋を視線で指すと。
ナディアはきょとん、と僕を見た。
「あら、あたしが作るわけないでしょ。作るのは2人。拓巳とライアン」
「…………」
拓巳の方を見ると、すでに承知しているのか、肩をすくめるだけ。