ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】
そうだった。
彼……いや彼女は、家事が恐ろしく不得手なのだ。
特に料理には、絶望的に向いてない。
「料理上手なダーリンに教えてもらって、少しは上達したんじゃないの?」
半ば諦めつつ聞くと、ナディアは「うふ」と大きな体をくねらせた。
「彼は、『そういう不器用なところも可愛いよ』って言ってくれるの♪」
「「…………」」
無理やり言わせてんだろ、絶対。
ダメだよ。もはやピンクオーラしか見えない。
どんだけ甘やかされてんだ、こいつ。
末期だね。つける薬なし、ってやつ。
拓巳と視線で確認し合い、間違いないと互いに頷きあった。
「ライアン、お前シャワー浴びてこい。オレが何か作っておいてやる」
「ん、サンキュ。そうする」
拓巳の料理なら、まだマシだ。
急に空腹感を覚えたお腹を抱えながら立ち上がって、バスルームへ足を向け――
「そうだわ、ライアン」
さりげない声に、呼び止められた。
シュッ……
投げつけられたそれを、とっさに胸の前で受け止める。