ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】
恋愛は、簡単だと思っていた。
標準以上には整っているらしいこの外見のおかげで、落ちない女の子なんていなかった。
望む言葉をささやいて、ベッドへ誘えば、たいていは思い通りになった。
付き合っては別れ、別れては付き合って……
お手軽な関係はラクで楽しくて、自分には合ってると思ってた。
でもそれは、Likeではあったけれど、Loveではなかった。
飛鳥と出会った今、はっきりわかる。
僕にはろくな恋愛経験がない、ということ。
だから……――そうだ。
わからなかったんだ、どうすれば飛鳥が笑ってくれるのか。
誰より大切で、誰より幸せにしたい彼女。
自分だけのものにしたくて。
他の誰にも渡したくなくて。
プロポーズはしたけど、それだけじゃ不安で。
いつもそばにいたいのに、彼女は仕事が大好きで。
もっと僕を、僕だけを見てほしくて。
どうすればいいのかわからなくて。
焦っていた、のかもしれない。
だから、目に見える“物”を贈り続けた。
そうすれば、女性はいつだって喜んでくれたから。
それが愛情を示す手段だと、思い込んでいて。
彼女は、そんな僕のことを、ちゃんと見抜いていたんだ。