ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】

箱入り? それってつまり……
「ミユキちゃんの実家って……?」
「漬物屋。何百年だか続いてるって言う老舗らしい」

「そうなんだ」

唇から、重たい息が漏れた。
ライアンの環境と、重なるような気がしたから。

「俺は知らなかったんだけど、婚約者がもういたらしくて。子どもの頃から決められてたってやつ」


婚約者……
ツキン、と胸が痛んだ。

もう、彼にも婚約者、いるかもしれない。
誰が見ても、文句のつけようのない完璧な人が。

テーブルの端、経済新聞が皮肉気に映る。

リーズグループ関連の動きが少しでも載ってやしないかと、ストーカーみたいに調べちゃってるけど。

後継者就任とか、婚約とか。
そんな記事を見つけてしまう可能性もあるわけで……そうなったら、私の心はどうなっちゃうだろう。

きちんとそれを、受け止めることができるかな……


「婚約者の話聞いて、なんか自信なくなっちまって。俺と一緒にいるよりも、もしかしたらそっちの方が……ってさ」

だからこれでよかったのかもな、と雅樹は気が抜けたみたいな口調で言う。

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