ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】

なんだか自分の状況とダブって、たまらなくなって。

「何弱気になってるの?」
バシッて、勢いよくその肩を叩いてしまった。

「アシスタントを雇わずにいるのは、戻ってくるのを待ってるからよね? まだ好きなんでしょう? 迎えに行ってあげて」

雅樹には、私みたいに諦めてほしくない。
結ばれてほしい――


「お前がそれ、言う?」
雅樹の口元にくすっと、小さな笑みが浮かんだ。

「え?」

「あんなに取り乱して泣くお前、初めて見たよ」

「と取り乱っ……」
金曜のこと?

「俺と付き合ってた時のお前は、いつも落ち着いてて、大人の女で。わがままも言わないし、俺の仕事も理解してくれるし、最高のパートナーだと思ったけど。ああいうカオもするんだなって、正直びっくりした」

ああいう顔って、……どういうカオ?
瞬きして首をひねる私へ、「自覚ナシかよ」って呆れた声が返ってきた。

「嫌いで別れたわけじゃないんだろう? いいのか、このまま誤解させたままで?」


「……っそれ、は」

「何か理由があるってことはわかってるけど。それってもう、どうしようもないことなのか?」


重ねて聞かれて、束の間、言葉を見失う。
どうしようもないこと?
決まってるじゃない、そんなこと。

悩んで、苦しんで、ようやく出した結論なんだから。

「もういいの。私たちは――」



「飛鳥さん、飛鳥さんっ……」

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