ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】
心の声が聞こえたように、彼女は頷いた。
その手がそっと、僕の髪に伸びる。
「大丈夫。ちゃんとわかってる。伝わってる。だから、特別なことなんてしなくていい。一緒にご飯食べて、抱きしめてもらって、それだけで……、私はものすごく幸せだから」
言い終わるなり、かぁっとその頬が染まっていく。
「あぁもうっ朝っぱらから何言ってるんだろ私っ!」
あっちへこっちへ。目を忙しく泳がせながら、僕の髪に指を絡め、照れたようにぐいぐいっと引っ張った。
そのささやかな刺激が、なぜかとてもくすぐったくて。愛しくて。
たまらずその手を取り、無理やりシーツへ押し付ける。
覗き込んだ彼女の顔が、首筋にかけて、さらなる熱を帯びた。
「やだ、みみ、みないで! めちゃくちゃ恥ずかしいからっ!」
ジタバタと振り回されるもう片方の手も掴む。
その拍子に、ぱらりと布団がはだけ――
露わになった上半身に小さく悲鳴を上げる彼女を、きつく抱きすくめた。
「ラ、イアン……?」
首筋に頬を埋め、洩れそうになるうめき声を殺す。
身体が熱い。
熱が、出口を求めて体中を駆け巡る。
くそっ……こんないい女が今まで一人だったなんて。
日本の男はバカじゃないのか。
「ライア――」
「愛してる。愛してる……飛鳥」