ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】
「ところが、モデルやらスタイリストやら、告白した美女たちはことごとく玉砕してる。『将来を考えてる相手がいるから』ってな。つい先月にも、そんな話を聞いたばかりだ」
将来を……?
「うーん、もう熱が冷めかけてたんじゃない? で、ちょうどその時にエックスガールフレンドと再会して」
ナディアの言葉に頷こうとして。
ふと浮かんだ想像に、顔が強張るのがわかった。
もしかして……
「飛鳥が、騙されてるってことはありませんか? 二股、とか」
僕の顔は、相当凶悪にゆがんでいたんだろう。
新条は苦笑しながら首を振った。
「矢倉はモテるが、ドン・ファンってタイプじゃない」
「ライアンとは違うってことね、ぷぷ」
「うるさいぞ、ナディア!」
「あいつが将来を考えて付き合ってる、って言ったなら、それなりに誠実に向き合っていたんだと思う。真杉だって、そういう相手がいるって噂くらい、承知していたはずだ」
僕たちは、3対の眼差しを交わし合った。
2人の間に、一体何があったのか?
矢倉が愛した女性は、今どうしてるのか――?
「まぁ、なにはともあれ」と、
新条がワインをそれぞれのグラスに注ぎながら言った。
「お膳立てはしてやる。あとはお前次第だ。絶対に泣かすなよ?」
僕は強く頷き、グラスを掲げる。
そうだ――賽は投げられた。