ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】
迎えた翌日。
「ライアンさーん! お疲れ様です。今日はよろしくお願いします!」
フェミール池袋の駐車場に自分の車を停めて外に出るなり、ラムの声が響いた。
飛鳥たちは先に着いていたらしい。
矢倉の車もあるな。
フードコーディネーターの車から撮影に使用するらしい食材を下ろし、全員で中へと運びこんでいるところのようだ。
ラムに手を振り返し、飛鳥の姿を探す――……いた。
バンの後部座席から荷物を取ろうとしてる、ほっそりしたその後ろ姿へと近づいていく。
「手伝うよ」
声をかけて、横から手を伸ばすと。
ビクッ……
春らしいベージュのジャケットに包まれた肩が揺れ、バサバサッとビニール袋が座席の床に落ちた。
「やっ、やだ……びっくりしたぁ」
焦ったようにこぼれた野菜――キャベツやらカボチャやら――を袋に戻していく。
隙を見せたことが恥ずかしかったんだろうか。
髪を後ろでまとめているせいで露わになった耳、そこからうなじへのラインが、ほんのり色づいて……
噛みつきたい衝動を、ぐっと押さえなくちゃならなかった。