ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】
15. トラブル~飛鳥side
スタジオ内にいた全員――私、南波さん、アシスタント2人、雅樹――は、言葉もなく立ちすくんでいた。
シンクの蛇口から毒々しく垂れ流される、赤茶けた水を見つめたまま。
何度止めて、戻しても、水の色は変わらない。
赤銅色の、泥水のようなものが延々と流れてくる。
「こ、これ……なんですかね」
引きつった顔で言う南波さんへ、「確認してくる」と、私は駆け出した。
入口のところで、ライアンとラムちゃんにすれ違う。
「飛鳥さん!」
「飛鳥、今叫び声が聞こえたけど……何かあったの?」
「水が変なの!」
叫ぶようにそれだけ言って、廊下を抜け、事務所へ駆け込んだ。
「すみません、ちょっといいですか!?」