ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】

「え、大丈夫ですよー? 最後までやりますよ!」

声を上げたラムちゃんに、笑顔でライアンは首を振る。

「あとは食器を片づけるだけだからね。それに、予算関係のことで彼女とまだ話し合いが残ってるから」

は、話し合い?
予算って、え、何かあった?

戸惑う私をよそに、スタッフは全員納得顔で腰を上げてしまう。

「そっか。じゃあ、お疲れ様でした」
「打ち上げ、やりましょうね絶対」

「え、や、あの……私も、」
一緒に帰るから、と言いかけた私の言葉を遮るように、ライアンの背中が目の前に立ちふさがる。
「気を付けて帰ってね、お疲れ様」


頼みの綱の雅樹は、別件の仕事があるとのことで一人だけ、先に引き上げてしまってる。
つまり……


玄関ドアが閉まり。


カチャン

ライアンが、鍵を閉める。


つまり、私は……逃げられない。


< 267 / 343 >

この作品をシェア

pagetop