ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】
最初は、その美貌と猛アプローチに戸惑うばかりだったけど、
次第に惹かれていって……
プロポーズされたときは、本当に幸せだったな。
綺麗にラッピングされた箱を手にして、カランと小さなベルの音とともに外へでた。
一瞬強く吹き付けた北風に首をすくめ、マフラーをきつく巻き直しながら、彼へと目をやり――ずるっと肩が落ちた。
また逆ナンされてる。
彼に盛んに話しかけてるラテン系の女性2人の姿に、ため息がこぼれた。
いつの間に近づいてたんだろう。
さっきまではいなかったのに。
年明けから温かい日が続いているとは言え、1月下旬の日本には不似合いの薄着の2人組。
豊かに盛り上がった胸元も露わな、肉感的な美女だ。
自分のスタイルと見比べて、小さくため息をつく。
風に乗って流れてくる言葉は、英語じゃなさそう。
一体何か国語話せるんだ、あの王子様は。
一緒に入ったら狭い店内がパニックになるから、ってわざわざ外で待っててもらったのに。
これじゃ、全然意味ないじゃない。
親しげに彼の背中に回された手に、
それを嫌がる風もなく受け入れ、笑顔で答えてる男に、心がささくれ立つ。
そして、そんな些細なことで動揺してしまう自分が、腹立たしい。
嫌だな。
こんなヤキモチ焼きの女じゃ、そのうち愛想つかされちゃう。
ネガティブな思考を頭から振り落とすように、私は勢いよく一歩を踏み出し――……
グキッ!
思いっきりわずかな段差にヒールを取られた。
「きゃあっ!」
すっ転んだ……