ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】

こんなのセクハラだ。
こっちが訴えてやるっ……


拳を握り締める私へ、彼が続けた。


「君は矢倉が好きなんだろ? 僕とキスしたくらいで、その想いが揺らぐはずないよね?」


ドキッと、心臓が一瞬、警告するように音を立てた。

彼の口調も表情も、特に変化はないけど……


「それとも、何か困ることでもあるのかな?」


これって。
た、試されてる……?


ひゅっ、と喉の奥で音が鳴った。
頭に上っていた血が、今度はさぁっと引いていく。

まさか、私と雅樹のこと、疑ってるの?
嘘じゃないかって? どうして……


「ほら、おいで」



彼が私へ、両手を差し出した。

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