ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】
ガーゼに覆われた痛々しい頬へだけ、意識を集中して。
その強い眼差しを視野から追い出した。
あと、数センチ。
私の唇は、彼の柔らかなそれへ、戯れのようにわずかに触れ――
「っ……ぅきゃぁっ……!?」
獲物が罠にかかった瞬間のように。
それはコンマ何秒かの出来事だった。
後頭部と腰を、ぐいっと大きな手に捕まれて。
強引に、引き寄せられた。
どすんっと勢いよく、彼の膝の上へお尻が落ち。
その腕の中へきつく、抱きこまれ……
「何す、……ン……っ!」
唇が、塞がれていた。
何が起こったかのかと空白になった頭のまま、緩む唇。
そこを押し広げるようにして侵入してきたのは……熱い舌。
「やっ…め……ん、ぁっ」
厚い胸板は、私が叩こうが引っかこうが、びくともしない。
振り回した両腕は、やすやすと片手に拘束された上、
うなじは、もう一方の手でがっちりと固定されてしまい。
後はもう、彼の独壇場だ。