ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】
16. 葛藤~飛鳥side
『社内の評判も上々ですよ。ほんとにありがとうございました』
受話器から樋口さんの弾んだ声が聞こえてくる。
「こちらこそ、ありがとうございます。今後とも、何卒よろしくお願いいたします」
デスク上のパソコンへチラリと目を走らせ、
「レシピコンテスト結果発表!」というポップな文字を確認して頬が緩んだ。
今日、無事にサイトアップを迎え。
もちろん今後のフォローは残ってるけど、ひとまず先方も出来栄えには満足してくれたらしく、ホッとしてるところだ。
『もちろんです。またぜひ、一緒にやりましょう』
「はい、ぜひ!」
こっちも自然とテンションが高くなってしまう。
業界最大手の帝電としか取引をしていなかったオオタフーズに食い込めた今回の仕事は、内容や予算規模に関係なく、大きな意味があるから。
今後、アクセス数や口コミ等の反響をチェックして。
この流れを滞らせることなく、売り上げアップに貢献できるような営業提案を仕掛けていくつもりだ。
先月風邪をひいてからこっち、なんとなく体調がよくないっていうか、いまいちやる気もでなかったけど。よしよし、なんか元気出てきたような気がする。
なんて、ほくほくしていたら――
『そういえば、明日の打ち上げ、大丈夫ですよね?』
「え? あ、あぁ……はは」
虚を突かれた私は、一瞬言い淀む。
そして、さっきよりは幾分抑え気味のトーンで、「もちろん伺います」と答えた。