ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】
『あぁほんっとに、よかったぁ。あなたが来てくれて!』
ん? と首をひねった。
樋口さんの声は、ガッツポーズでもしてそうな勢いだったから。
「えっと、篠木もちゃんと連れて行きますから……?」
私が行かないとラムちゃんが来づらい、とでも心配したのかな。
『はいはい、これで………が……入る。……ぐふっ』
「はい? 何かおっしゃいました?」
『いえいえ、こっちの話です。では明日』
よろしくお願いします、と受話器を置きながら、
気分が下降していくのを感じていた――打ち上げ、の一言で。
数日前に樋口さんから誘われた時は、それらしい理由をつけて、断ろうかとも思った。
でも。
大河原さんも来るって聞かされたら……行かないわけにいかないじゃない?
間違いなく、ライアンと顔を合わせることになるだろうなぁ。
心が波立つのを自覚しながら、
おずおずと、唇に触れる。
「あのキスは、反則でしょう……」
冷たく乾いたそこから、やるせない吐息がこぼれた。