ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】
「手、離して……」
真摯な眼差しが怖くなって、手を引き抜こうとするけれど。
彼は応じない。
どころか――……
「ひゃっ……!」
ぐいっと引き寄せられて、私の身体はすっぽりと彼の腕の中に収まっていた。
「や、やだっ……はなし、っ……」
もがく私の背を、あやすように撫でて。
「ごめん。……少しだけでいいから、このままで」
縋るような口調に、抵抗する気が萎えていく。
「どうして君は、他の男のものなんだろう……」
喘ぐように、吐き出すように、つぶやかれた言葉。
包むように回された腕の、温かさ。
交じり合う、2つの鼓動。
すべてが愛しい。