ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】
<えっと……ごめん、なんだって?>
聞き返した僕に、サムはニヤニヤと楽しそうな笑顔を向けてくる。
<彼女のことが気になって仕方ないって? まだこじれてるのか>
<……放っておいてくれ>
<今やお前は、ル・パピヨンの伝説だぞ。バレンタインの夜、窓際の席、現れない愛しい恋人を待ち続ける、美貌の男……>
<そんな不吉な伝説、残してどうするんだよ>
<だからこそ、友よ。お前には彼女とうまくいってもらわないと困るのだ。来年からあの席の予約が入れづらくなるだろうが。お前たちがうまくいけば、伝説もハッピーエンド、めでたしめでたし、だからな>
こっちだって、そうしたいよ!
叫びたい気持ちを堪えて、はぁっとため息をついた。
そこへ。
「そういえば、真杉さん」
ラムからなにくれとなく世話を焼かれ、鼻の下をだらしなく伸ばしていた樋口が、飛鳥へ声をかけた。
「ラ……篠木さんから、飛鳥マジックの話を聞いたんですけど」
相当酒に弱いらしい。顔が真っ赤だ。
「真杉さんが結んだカップルって、成婚率100%ってほんとですか?」