ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】
「どうしてこんなにドキドキしてるの?」
「……ど、ドキドキ、なんてっ」
「君が好きなのは矢倉で、僕のことなんて意識しないんじゃなかった?」
「そ、そうよっ」
挑むような視線が、僕へとぶつかった。
けれど。
熱のこもる潤んだ瞳も、
怯えたように戦慄く唇も、
僕へ真逆のことを伝えている。
一瞬だけ感じた違和感。
僕はその直感が間違っていなかったことを悟った。
ジワリと、胸の奥から抗いようのない悦びが突き上げる。
どうして気づかなかったんだろう。
あぁ間違いない、彼女は――
「飛鳥、君はまだ、僕が好きだね?」