ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】
首をひねっていると。
カチャっと小さな音がして、ドアが開いた。
「お、気が付いたか?」
顔をのぞかせたのは……雅樹!?
「あ……私、何かやらかした?」
よっぽど心配そうな顔をしていたんだろう。
ベッド脇へ椅子を引っ張ってきた雅樹は、「いや」と手を振りながらそこへ腰を下ろした。
「店の廊下で倒れたんだよ。病院行ったけど、入院するほどのことじゃないって診断で。その後少しだけお前、意識戻ったんだぞ? で、帰りたいって言ったから、俺が連れてきて。心配だから、目を覚ますまではいようと思ってさ」
うわぁ……なにやってんだろ。最悪だ。
「ごめんね。迷惑かけちゃって……」
そうだった。
確かみんなの前で、ライアンと喧嘩しちゃったんだっけ。
――そうだよ。せっかく“彼女”がまだ僕を意識してくれているんだから、ここで一気に攻めていかないとね。
――じゃあそんなにカッカすることないだろ。意識してないなら、無視すればいい。
そして……
「あの、ライアンは?」
夢うつつに、彼に抱き上げられたような記憶があって確認すると。
雅樹は「帰った」と無造作に肩をすくめた。
「救急車に乗りたがったんだけど、付き添いは一人って言われて。そしたら俺に、『恋人は君なんだから、君が乗るべきだ』とさ」