ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】
反対?
産むことに、反対ってこと?
つまり……堕ろせと?
「ど、どうして……?」
予想外の険しい口調に、思わず怯む。
「今時シングルマザーなんて珍しくないでしょ? 産休育休取って、リーママやってる同僚だっているし、大丈夫よ。立派に育ててみせるから」
「子育ての間は、フルタイムで今まで通りってわけにはいかないだろう。収入だって減るんだぞ」
「平気よ。貯金はあるし――」
「お前、シングルマザー舐めてないか」
ビクンっと肩が揺れた。
雅樹の、こんな顔を見るのは初めてだった。
「なんとかなる、産みたい、っていうのは、親側の都合でしかないよな。それにつき合わされて振り回される、子どもの気持ちは考えたことあるか? どんなに頑張ったって、母親は父親にはなれない。限界があるんだよ」
「っ……」
昔付き合ってた時、チラッと聞いたことがある。
雅樹は確か……母子家庭だ。
きっと、自分の経験から真剣に忠告してくれてるんだろうと思う。
でも、でも……
「わかってる……」
無意識に、きゅっと唇を噛んでいた。
この子には、産まれたときから父親がいないことになる。
寂しい思いをさせてしまうかもしれない。
そんなことわかってる。
わかってる……