ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】
「でも……じゃあ、どうしろっていうの? この子を諦めろって……堕ろせって言うの?」
「それも一つの選択だな」
あくまでも冷静な態度を崩さない雅樹に、カッと怒りにも憎悪にも似た感情が湧いた。
「できるわけないでしょう! そんなこと」
「お前の年ならまだ大丈夫だろ。ちゃんと結婚できる相手見つけて、それからだって――」
「私は誰とも結婚なんてしない!」
うねるような感情の波に飲み込まれて。
コントロールできなくなっていく。
ボロボロ零れ落ちる涙をそのままに、もがくように首を振った。
「嫌だから。絶対産むから」
他の人の子どもじゃ嫌だ。
誰に何を言われようと。
ライアンだけ。彼だけが、私は……
「好きなの、愛してるの……彼の、子なの。だから産みたい、それじゃいけないのっ!?」
吐き出すように叫んで、ゴホゴホっとむせ込んだ。
雅樹は黙ったまま、私の背中をさすってくれて。
室内にはかなり長い間、みっともなく啜り上げる私の嗚咽だけが響いた。