ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】
何やってるんだろう、私……。
ちょっと興奮しすぎたかもしれない。
雅樹は、ただ心配してくれただけなんだし。
赤ちゃん、びっくりしちゃったかも。
気持ちが落ち着いてくると、頭に血を上らせた自分が恥ずかしくなり、雅樹の手を遮った。
「雅樹、もう大丈夫。ごめんなさ――」
何を言うつもりだったか忘れ、私は口を噤んでいた。
振り仰いだ雅樹の顔から、それまでのシリアスな表情が消えていて。
替わって、ニヤリと人の悪い笑みが浮かんでいたから。
何だろう、と不審に思う間もなく――
「それが聞きたかったんだ」
彼が口にしたのは、意味不明な言葉。
は?
雅樹はもう一度ニッと笑みを深くして、私から離れて行き……寝室のドアを開けた。
その向こうに誰か立ってる。背の高い、――男の人……?
「っ!!」