ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】

何やってるんだろう、私……。

ちょっと興奮しすぎたかもしれない。
雅樹は、ただ心配してくれただけなんだし。

赤ちゃん、びっくりしちゃったかも。

気持ちが落ち着いてくると、頭に血を上らせた自分が恥ずかしくなり、雅樹の手を遮った。

「雅樹、もう大丈夫。ごめんなさ――」


何を言うつもりだったか忘れ、私は口を噤んでいた。

振り仰いだ雅樹の顔から、それまでのシリアスな表情が消えていて。
替わって、ニヤリと人の悪い笑みが浮かんでいたから。

何だろう、と不審に思う間もなく――



「それが聞きたかったんだ」


彼が口にしたのは、意味不明な言葉。


は?


雅樹はもう一度ニッと笑みを深くして、私から離れて行き……寝室のドアを開けた。


その向こうに誰か立ってる。背の高い、――男の人……?



「っ!!」


< 322 / 343 >

この作品をシェア

pagetop