ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】
19. 打ち上げ、その後②~ライアンside

「……ちょ……ちょっと待って。何言ってるの?」


飛鳥は困惑しきった眼差しを、僕へ合わせた。


「普通に、ものすごく流暢に話してたわよ? 私、すごいな、日本人みたいだなって感心して……」

気持ちは十分わかるけど……でも、事実なんだ。
彼が話せるのは、母語である中国語と、仕事に必要な英語だけ。

日系のクライアントには社内の専門スタッフが対応するから、直接関わることはない。つまり彼に、日本語は必要ないんだ。

おはようとか、こんにちはとか。
僕が教えた挨拶程度なら、できるだろうけど。
総帥だの後継者だの、リーズグループの事情を延々と説明できるような日本語力は、誓って、持っていない。

張の写真を見せて、答え合わせしてもいいけど……
そんなことしなくてもほぼ、予測は成り立つ。


それはつまり――



「賭けてもいい。君が会ったのは、張のニセモノだ」




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