ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】


どれだけ時間が経っただろう。



飛鳥はまだ、ショックから立ち直れないって様子だ。


完全にキャパオーバーなんだろうな。


半分ほど開いた唇が、時折、「ニセモノ」「誰が」「どうして」なんてブツブツつぶやいてる。

そこに思い切り噛みつきたい気持ちを押し殺して。
精一杯、余裕を装う。

「おそらく、総帥に近い誰かが雇った奴だろうね。僕たちの仲を裂くために。もしかしたら、本当に日本人かもしれない」

「そ、んなっ……じゃあ、私なんのため、にっ……」

怒りのためか、その頬に血が上る。
悔しさを滲ませて潤む大きな瞳は、吸い込まれそうに美しく――


あぁもうっ限界だ。

身体が自然に動き、もう一度彼女を抱き寄せていた。

「っえ、ちょ……っ!」

びっくりしたように声を上げた飛鳥は、ジタバタと抵抗したけど。
加減なんて、できやしない。

ずっとだ。
ずっと、こうしたかった――……


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