ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】
「ドクターに、ちゃんと確認してからにしよう」
そう言うと、飛鳥の顔にホッとしたような笑みが浮かんだ。
つられて微笑みながら、「ちょっと妬けるな」と、その頬を指でつついた。
「君の頭の中に、僕以外のヤツがいるなんて」
「ご、ごめん……? じゃあ、ライアンも赤ちゃんのこと、一緒にいっぱい考えて。そしたらお互い様でしょ?」
訳の分からない理屈に笑ってしまった。
「よくわからないんだけど、それ」
「う……だからね、ライアンにもこの子のこと、愛してほしいなって」
そのどこか不安げに僕を窺う眼差しに。
あぁと閃いた。
もしかして彼女は、恐れてるんだろうか。
僕がベビーを歓迎するかどうか……
「当たり前だろ。愛しくてたまらないよ。僕と君を繋いでくれた、愛のキューピッドでもあるからね」
シーツの上に投げ出された彼女の手を取って、そっと口づける。
「ライアン……」
安心したように息を吐く飛鳥を見て、心がちょっと痛んだ。
もしかしたら気づいてないかもしれない。
僕があまり真面目に避妊してなかったこと。
ベビーができれば、彼女が仕事より僕との生活に比重を置いてくれるんじゃないかと思っていたこと。
男共と肩を並べてバリバリ働く彼女のことは、充分リスペクトしているけど。
時々仕事に彼女を取られてるような気になって……
渦巻く独占欲と嫉妬は、どうしようもなくて。
もちろん、彼女はそんなこと知らなくていいし、知らせるつもりもないけれど――……