ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】
「名前だよ! ジョナサン、アマンダ、ダニエル!」
当たり前じゃないか、とムッとすると。
「はぁ?」
貴志は、全くわけがわからない、といった風にぽかんとしてる。
仕方ないから説明してやった。
「わが子の名前って、両親からの最初のプレゼントだろう? じっくり考えたくてさ。まだ性別もわからないし、気が早いかもしれないけど、今から候補を練ってるんだ」
ギリギリになって慌てるのも嫌だしさ、と続けながら。
そんなことを嬉々として話す自分に気づいて、笑みがこぼれた。
どうしてかな。
以前は父親になるなんて、考えたこともなかったのに。
飛鳥と一緒にいると、ごく自然に、その姿を想像して受け入れている自分がいる……どうしてだろう。
「え、もしかして……真杉飛鳥、妊娠したのか?」
彼の声が若干緊張したことに気づいたけど、僕は構うことなく頷いた。
「僕の友人はさ、お世話になった人の名前をもらったらしいんだ。だから僕も、ハイスクール時代の先生と、通ってた教会の神父様の名前をまず候補にしてみたんだけど」
結構自信作なんだ。どうかな?
と顔を横に向けると、相手はかなり複雑そうな顔でコースターを見下ろしている。
「ま、僕と飛鳥のベビーだからね。可愛い子が生まれるのは当然だけど。でもさ、女の子……プリンセスみたいな子だったらどうしよう。やっぱりGPSはもたせるべきだよね。盗聴は……まずい? だってさ、心配じゃないか。絶対ピュアな子になると思うんだ、僕と飛鳥のベビーだし………あれ、どうかした、貴志?」