ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】
私が初めてライアンと出会ったのは、去年の5月だった。
職場の後輩に頼まれて、彼女が出会い系アプリで知り合ったという男に会うため、ホテルに向かって――現れたのが、彼だった。
なんと私は、その後輩に騙されていて。
命を狙われたあげく、捕まって殺されそうになり。
そこを、ライアンに助けられたわけなんだけど。
その時だ。
彼の美貌の下に、凍てつく何かを垣間見たのは。
すべてを拒絶した、冷え冷えとしたもの。
普段の彼からかけ離れた表情は、冷酷にすら見えた。
――彼は、危険な男よ。
私は彼のことを、どれだけ知ってるんだろう?
「……ちゃん、飛鳥ちゃん? どうかした?」
奈央さんに呼ばれてたことに気づいて、「すみません、ボーっとしてて」と取り繕う。
「やっぱり足、まだ痛むんじゃない? 顔色悪いわよ?」
「いえいえ、全然平気ですっ」
「じゃあ、何か他に心配事でも?」
一瞬返事に詰まってしまい、へらりと笑ってごまかす。
奈央さん鋭いな。
「もしかして、結婚をご両親に反対されてるとか。ライアンの実家って、あのリーズグループの縁続きなんでしょ?」