ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】
馴染んだ体温。
滑らかな肌。
草原のような香り――
密着した裸体から伝わる愛しい人のすべてが、僕へゆるやかな目覚めを促した。
導かれるように目を開ければ、眩い光が目の前を覆う。
クリスマスの朝、というマジックなのかもしれない。
ベッドの上、くしゃくしゃに乱れたシーツにさえ、まるでバージンスノーのような清らかさを感じてしまうのは。
視線を下ろして、フィアンセの無防備な寝顔に、束の間見惚れた。
「Merry Christmas, my princess」
抱き寄せて囁くが、飛鳥は目を覚まさない。
額から頬、鼻へ。
バードキスを繰り返しても、彼女はされるがままだ。
昨夜はずいぶん無理させてしまったから……当分起きないかもしれないな。
キスマーク、と言うには露骨すぎるアトを華奢なデコルテへ見つけ、申し訳なさを感じながら指でたどる。
クリスマスイブ、というイベントに煽られたわけじゃないけれど、
昨夜は久しぶりのデートだったし……手加減できなかったんだ。
起きてこれ見たら、彼女また真っ赤になって怒るんだろうな。
そんな顔も可愛いだけなんだけど。
くすり、と小さな笑みが漏れた。