ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】
ライアンが養子だっていうことは聞かされていた。
引き取られたのは、確か10歳の時だって言ってたけど。
子ども時代について詳しく聞いたことはなかった。
どこまで踏み込んでいいのか、わからなかったから。
チラリと隣に視線をやると、リラックスした表情でハンドルを握るライアンがいる。
誰にだって、触れてほしくないことの一つや二つあるし。
婚約者だからって、なんでもかんでも聞いていいってものでもないだろうし。
詮索好きで面倒な女とか、思われたくないし……
でも……知りたい気持ちも確かにあって。
聞いちゃダメかな。どうしよう。
うだうだと、言葉を探しつつ躊躇っていたら――
「飛鳥の考えてること、わかるよ」
先んじられて、「え?」って硬直してしまった。
「僕は養子で、弟は実子で、そこらへんにトラブルはなかったか、心配してくれたんだろう?」
「あの……ごめんなさい。話したくなかったら、別にっ――」
「全然かまわないよ。確かに、生まれるまではちょっと怖かったんだ。せっかく見つけた自分の居場所が、なくなってしまうんじゃないかってね」
ライアンはチラリと、私へ目を向ける。
清々しいくらいの笑みが、そこにあった。
「でも実際は、それは全部、ええと……なんだっけ、キユウ、ってやつだったよ。父さんも母さんも、何も変わらなかった。弟と変わらず、僕のことも愛して、守ってくれた」
細身のお義父さんと、ふっくらかわいいお義母さん。
ドキドキしながらパソコン画面越しに初対面した時の2人が、脳裏に浮かんだ。