ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】
広東省出身の中国人であるお義父さんは、リーズグループの創業ファミリーの親戚筋なんだけど。グループ企業から一切の援助を受けずに単身でカナダに渡り、そこで出会ったお義母さんと2人で、苦労して会社を興したそうだ。
そのせいだろうか。
今や北米全土でIT関連をはじめとしたいくつもの会社を経営する社長夫妻なのに、そのイメージをいい意味で裏切って、2人ともおしゃべり好きで親しみやすい人たちだった。
会う前は、ちょっと心配してたのよね。
ライアンは、私と出会ってリーズグループと離れることを決めたから。
もしかしたら責められたり、結婚を反対されるかもって。
彼は、『親子の縁まで切ったわけじゃないから大丈夫』って笑ってたけど……正直なところ、怒鳴られる覚悟までしてた。
けど。
2人は私のために勉強したという慣れない日本語を一生懸命使って、夫婦漫才かと思うほどユーモアたっぷりに、結婚を祝福してくれて。
ものすごく嬉しかったな。
ライアンとご両親のやりとりからは、良好な関係が伝わってきたし。
彼がこんなにも明るく朗らかな理由が、わかった気がした。
いろんな思い出がよみがえってきたのかもしれない。
遠くを見つめていたライアンは、その唇に柔和な笑みを浮かべた。
「血はつながってないし、髪の色も瞳の色も違うけど……僕の両親は彼らだけだよ。誇りに思ってる」
じんと、胸の奥が熱くなっていく。
彼が、本当にご両親を愛してるってことが伝わってきたから。