ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】
「出会えたことを、神様に感謝してるよ。彼らに引き取られるまでは……もう思い出すのも嫌になるくらい、…………だったから」
つぶやくような声が聞きとれなくて隣を向くと。
憂いを帯びて翳る双眸が見え隠れして。
「……ライアン?」
息を詰めて見守る私へ、やがて彼は自嘲気味に笑いながら首を振る。
「ごめん、この話は暗くなっちゃうから……また別の機会に話すよ」
「……うん、わかった」
私はおとなしく頷いた。
知りたくない、わけじゃない。
けど……それより今夜、少しでも話してくれたことが嬉しかった。
こうやって少しずつ、聞かせてくれたらいいな。
そうしたらきっと、この胸の奥にわだかまるものが、消えていく気がするから。
「飛鳥とも、あの2人みたいな夫婦になりたい。式が待ち遠しいよ」
「っ……うんっ……」
なんだか泣きそうになってしまい、こくこく、頷きながらうつむいた。
「飛鳥」
顎に彼の長い指が触れ、上向かされて。
優しい指が、滲んだ涙をぬぐってくれて……
はたと私は、いつの間にか車が停まってることに気づいた。