ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】
「奈央さんがさ、『飛鳥ちゃん、何か悩み事があるみたい』だってさ。この前の日曜、うちに来ただろ? その時に、浮かない顔だったらしくて」
この前の日曜……?
そんなに深刻になるようなやりとりは、思い出せないけど。
「あれじゃないの、マリッジブルーとかっていう」
軽く言ってはみたけど……やはり飛鳥が何かに不安を感じていたなら、
そしてそれを僕ではなく、別の人間の前で見せていたというなら、問題があるような気がする。
それって僕には言えない、ってことだろ?
つまり、原因は僕、かもしれない。
スプーンを置き、考え込んだ。
彼女を不安にさせるような……こと?
一体なんだ……?
「お話し中、申し訳ありませぇんっ!」
いきなり。
伸ばした語尾と一緒に派手なメイク顔の女性が現れ、思考が遮られた。
「あのぅ、失礼ですけど、カレントウェブプランニングの吾妻社長とリー専務でらっしゃいますよねえ?」
女性はセミロングの茶髪を振り乱しながら、ぐいぐいと僕の隣の席へ腰を下ろしてしまった。