ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】

「A出版の名誉主幹なんて知り合いだったのか」
拓巳が驚いたように言うと、悪びれもせずにナディアは「まさか」と肩をすくめた。

「インタビュー読んだことあるだけ。Bカップごときが偉そうにしてるから、ちょっとイジメちゃったわ」

勝ち誇ったように中指を立てる隣席の相手。
思わず視線を逸らし。

「自分なんて何もないくせに」
ぼそりとつぶやいてしまった。

「ひっどぉい! 助けてあげたのにっ!」

……聞こえたらしい。

きぃっと眉を吊り上げてるこいつ、ナディア・トレヴィスは、僕と拓巳の大学時代からの友人で、シェアメイトだったアメリカ人。
ミスコンにだって参加できそうな美女ルックスを裏切って、正真正銘の男である。本名を、ネザー・トレヴィスという。

「ちょうど窓からあなたたちが見えたから、声かけようと思ったらこれだもん。ほんと、昔っからモテすぎるのよね2人。大学の時だって、あんたたち目当ての女から、あたしがどれだけ嫌がらせされたことかっ!」

嫌がらせ?
そうだったんだ、知ってた? いや、知らない。
ていうか、やられたらやりかえしてるだろ、こいつなら。
間違いない。

と、拓巳と視線で確認し、頷き合う。


「で、あたしに隠れて、何のナイショ話かしら?」
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