ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】

ギュッと抱きしめたまま、馴染んだ香りを吸い込んで。
「一緒に、入ろうか」

ジリジリと溜まりだす熱を吐き出すようにつぶやけば、
彼女の頬がさっと朱に染まる。

あぁもう、そんな顔見せられたら……
バスルームまでだって、我慢できなくなってしまう。

「でも、あのね、待っ……ちょ、私、話した――んんっ」

言葉を封じるように、口づける。
そのままくるりと態勢を入れ替え、彼女をソファへ組み敷いた。

「ん、……ぁっ」
キスを重ねながら、服の上から荒っぽくその体をまさぐると。
恥ずかしそうに彼女の腰が揺れ、その顔が確かな官能の色に染まっていく。

やがて――おずおずと、応えるように細い腕が僕の背中に回されると。
全身へ、蕩けるような幸福感が満ちていく。

愛してる。
言葉を埋め込むように、ミルク色の首筋を甘噛みした。

「ん、……」
彼女の声に、わずかに甘えるような響き……
僕は自分の中へ、昂る欲望を感じた――



けれど。


くたりとすべてを委ねていた彼女の身体が、唐突にビクッと緊張した。
そのまま、胸を押し返すようにして、僕の動きを無理やり止める。

「飛鳥……?」

あがった息のまま、詰るように見下ろすと。
彼女ははっきりとわかるほど、傷ついた瞳で僕を見つめ返した。


「ライアン……何か私に隠してることはない?」

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