ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】
僕自身は養子だし、本家とは関係なく生きてきたから、断ることも可能だった。
けど……悩んだ末、結局僕はそれを受け入れた。
リーズグループは世界中に散らばった移民(主に中華系)が中心となり、血縁関係を重視して発展してきた、ファミリー色の強い組織だ。
僕が断ることで、父さんの立場が悪くなっても困ると思ったから。
かくして来日後。
ジェネラルと名乗るSD幹部から仕事の連絡が入るようになった。
取引内容の裏を取ったり、情報漏洩のモトを探したり……
犯罪すれすれのものまであって、内容は本当にいろいろ。
内輪だけで処分を下す、というやり方は気に入らなかったけれど、サスペンス映画めいた仕事は意外にもおもしろく、徐々に慣れていき。
それと並行して、もう一つの効果も表れ始めた。
グループ内の企業はもちろん、関係のない企業まで、本業であるビジネスの話に乗ってくれるようになったんだ。
どうやら、SDの仕事のためたびたび訪れた本社で、フレデリック氏と直接話す機会に恵まれ、僕が彼のお気に入りらしいと噂されてることが原因のようだった。
そんな“旨味”を知ってしまってからは特に断る理由もなく、ずるずると「仕事」をこなし――3年ほどが過ぎた、今年の春。
また新しい「仕事」が舞い込んだ。