ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】

ボランティアで発展途上国の子どもたちを支援しているという彼女は、私の憧れの女性だ。気さくで、気配りもできて、話しやすくて……
だから私も、ついつい仕事上の立場を忘れて、「話、聞いてもらえますか」ってぽろっとこぼしてしまった。

最初は、ライアンの写真を見ながら「喧嘩売ってる?」とか、「アラフィフまで独身の私相手に、度胸あるわね」って冗談言ってた柴田さんだけど。
一向にまとまらない私の話を、根気強く、真剣に聞いてくれた。


――なるほど。自分が知らない相手の過去、ねえ。

――わかってるんです。誰にだって、秘密の一つや二つあるものだし。彼も『別の機会に話す』って言ってくれたし……だから、信じていればいいってわかってるんですけど。

――やっぱり気になっちゃう? 

こくりと、重力に負けたように頷いた。

――もしかしたら、彼が外国人ってことも影響してるかもしれません。どこまで踏み込んでいいのかとか、そういう常識が同じ物差しで測れなくて。不安なのかも。

――でもそれは、日本人同士でもそれほど違わないわよね? 一人一人、価値観なんて違うものだし。

確かにそうですね、と同意して。
自分の心の中を覗き込んだ。

私は一体、何をそんなに怯えてるんだろう……?


――たとえどんな話を聞かされても、この気持ちが変わらないって自信はあります。でも……だからこそ、何も話してくれないことが、寂しいって言うか。

――自分は彼にとって、その程度の存在なのか、って考えちゃうのかしら。

――そう、かもしれません……

詳細を知ってる女性がいると知っているから、なおのこと。
知らないままの自分が、もどかしい。
この感情をどう処理すればいいのかわからなくて……

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