ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】
――自分の中だけで結論を出そうとしちゃダメよ。
柴田さんは静かな口調で言った。
――2人にとって大事なのは、過去じゃなく、未来でしょ?
――……はい。
――まっすぐ今の気持ちをぶつけて、聞いてみなさい、彼に。
――でっでも……
――ねえ真杉さん、自分だけが我慢すればいいって思ってるんじゃない? ヤキモチ妬いてる、みっともない自分を知られたくなくて。
――う。……は、はい。おっしゃる通りです。
――2人の将来に関わることなんだから、ちゃんと言葉にして伝えなきゃダメよ。一人で抱え込みすぎるとね、いつかパンクしちゃう。自分から全部壊して、楽になりたいとまで思っちゃう。
そう言って、グラスへ落ちた柴田さんの眼差しには、ゆらゆらと悲しい色が漂っていて、ハッとした。
――もしかして……そういうご経験があるんですか?
「え?」と顔をあげた柴田さんは、決まり悪そうに肩をすくめ。
――バレちゃったか……バカよねえ。未だに、忘れられないなんて。
そしてすぐ、そんな自分を誤魔化すように笑みを浮かべた。
――だからね真杉さんには、そんな後悔、してほしくないの。
ちゃんと話し合ってみて。