ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】
話し合う。
気持ちをぶつけて、聞いてみる。
できるだろうか、私に。
確かに怖かったけど……お店を出て柴田さんと別れる頃には、気持ちは固まってた。
どんな過去があっても、この気持ちは変わらないから。
だから教えてほしいって伝えてみよう。
だいぶ気分は上向いて。
酔いも手伝って鼻歌なんか歌いながら、玄関のカギを開け――
リビングの電気をつけてソファに座る彼をみつけた時、何かがおかしいと思ったんだけど。
――女子会、楽しかった?
優しく尋ねる彼は、いつも通りで……
気のせいだった?
訝しく思いながら触れた頬は、外から帰ってきた私の手より冷たく、そっちに気を取られた。
――やだ、冷たい! 私の手より冷たいじゃない。お風呂沸かしてくるから、ライアン先入って。
――一緒に、入ろうか。
ささやかれて、頬が熱くなる。
もう何度も一緒に入ってるし、嫌じゃないけど……なかなか慣れない。
それに、たいてい彼の思い通りに喘がされて、流されちゃうし。
今日だけは、ちゃんと話し合いたい――決意が鈍らないうちに。
なのに。
――でも、あのね、待っ……ちょ、私、話した――んんっ
まるで何も言わせまいとするみたいな、強引なキス。
そのままソファへ組み敷かれた。
的確に快感のポイントを探り当てる彼の手に、次第に何も考えられなくなって……理性を手放そうとした瞬間だった。
鼻孔を、あの香りがかすめたのは。