ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】

舞台になったのは、六本木にある「シェルリーズホテル」。

系列ホテルの中でも、群を抜いて高級路線を貫いたここは、七つ星という突出した評価を得るラグジュアリーなホテルだ。
けれどどうやら最近、そこが犯罪に利用されているようだという。

出会い系アプリで知り合った女性に誘われてシェルリーズホテルで関係を持った客が、ヤクザのような男から脅迫を受けているらしい。

まぁよくあるハニートラップの類だし、客同士のトラブルはこちらが関与すべきことじゃないのだけど。
ホテルの名前が利用され常連客も被害にあっているとなれば、無視もできない。
そこでSDが調査に乗り出すことになったってわけだ。


僕の仕事は、犯人グループのメンバーであるマユミと名乗る女性に近づき、仲間について聞き出すこと。

さっそく本部からの情報に従ってアプリに登録し、メールを通じてマユミと接触してみると。
すぐに彼女が、かなり“慣れ”ていることに気づいた。

卑猥なトークには簡単に乗ってくるくせに、プライベートについては恐ろしいほどガードが堅い。
メールだけで情報を引き出すのは、難しそうだった。

今回の仕事で組むことになった貴志(たかし)は、時間をかけて懐柔していこうと提案してきたが。
僕は逆に、手っ取り早く寝てしまえ、と冷えた頭で考えていた。

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